大村湾
                高塚かず子

ヒトはわたしを大村湾と呼ぶ
だけど私は湖だった盆地だった
大陸だった
どろどろの熱い混沌だったマグマだった
------世界のはじまりそのひと雫だった
ほんの四十六億年前には

わたしのなかを
泳いでいるスナメリ
大気も水も土もひとつに溶けていた昔
同じ混沌のひとつらなりのいのちだった
魂のように跳ねる魚も
ほほえみのようにひらく花も
心のようにはばたく鳥も
祈りのようにうまれる赤ん坊も
核を抱いている真珠貝も
おびただしく浮遊している
プランクトンも

この地球も ひとつの生命体(いのち)
 どこから来て
 どこへ行くのか

あ いま 太陽がわたしに溶ける
さざ波をくまなく染めて













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